プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)で、製品サービスの市場ポジションを理解した上で施策を考案できている
PPMとは、「市場成長性」と「市場占有性」のふたつの視点で市場を細分化すること
プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)とは、企業にとっての製品サービスの組み合わせを最適化し、ビジネスリソースを効果的に配分するためのフレームワークです。PPMは、「市場成長率」と「市場占有率」のふたつの視点から自社の製品サービスを4つのポジションに分類し、それらの位置づけによって今後の活動方針を判断するための手法です。
それでは、詳しく見ていきましょう。
作業手順
市場を細分化する手法、プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)を知る
まず、PPMを構成する4つのポジション分類について理解していきましょう。4つのポジションには、「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」があり、市場成長率と市場占有率の違いで切り分けられれています。
花形(Star)「花形」とは、市場成長率が高く、市場占有率も高い製品サービスです。このポジションでは、現在〜将来まで大きな収益を生み出すことが期待できます。中小企業にとって、「花形」は最も力を入れるべき製品サービスです。さらなる積極投資によって市場シェアの維持〜拡大をすることが求められます。
「金のなる木」は、市場成長率が低いものの、市場占有率が高い製品サービスです。このポジションは、安定収益として企業財政を支える大切な役割を担っています。「金のなる木」は、既存マーケットである程度のシェアを持っているため、花形ほどの積極投資は不要です。むしろ効率運用を意識して、コスト管理・顧客維持に力を入れましょう。
「問題児」は、市場成長率は高いが、市場占有率が低い製品サービスです。このポジションは将来性があるものの、現状では十分なシェアを確保できていないため、投資判断が難しいです。「問題児」には、市場シェアを拡大するためにデジタルマーケティングなどの積極投資が必要です。
「負け犬」は、市場成長率も市場占有率も低い製品サービスです。このポジションは、あまり重視すべきでなく、撤退・縮小するのが妥当です。コストを最小限に抑えつつ、既存顧客への限定的な取り組みをしていくのが望ましいでしょう。
なお、「市場成長率」や「市場占有率」はちょっと難しいですが、今後の製品サービスの事業方針を見極めるためにも、おおよそでも良いので算出しておくと良いでしょう。インターネットで入手可能なレベルで良いので政府発行データや、シンクタンクの市場データなどを元に算出してみましょう。
・情報通信白書:https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/hakusyo/index.html
・ものづくり白書:https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/index_mono.html
・中小企業白書:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/index.html
プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)とプロダクトライフサイクル(PLC)
PPMと、プロダクトライフサイクル(PLC)はどちらも市場を分類するフレームワークであるため似ているところがありますが、PPMが、自社のいくつかの製品サービスのポジションを見極めてリソース配分するための手法であるのに対して、PLCは、製品サービスの市場におけるライフサイクルを見極めて段階に合った施策ををするための分類手法という点が異なります。
- PPM: 自社の複数ある製品サービスを「市場成長率」「市場占有率」の視点で分類
- PLC: 製品サービスの市場におけるライフサイクルを4つの段階ステージで分類
どちらも有用な考え方ですので、うまく活用していきましょう。
PPMの「4つのポジション」の特性に合わせてデジタルマーケティングを実行する
中小企業がデジタルマーケティングに取り組むにあたって、この「4つのポジション」に応じてどのように施策を切り分けて実行するか考えてみましょう。
デジタルマーケティングをそれぞれ「4つのポジション」ごとに対処していく
まずは「花形」です。このポジションの製品サービスであれば積極的に、デジタル広告やコンテンツマーケティングを実行し、さらなる市場シェアの拡大をねらいます。さらに自社サイトにおいて、品質・価格での強みのアピールや、成功事例・導入実績などの公開によって、製品サービスへの信頼向上を図ります。
次に「金のなる木」では、やや安定しつつある市場ということで地道に、自社サイトのSEO対策およびUI/UX改善を図っていきます。また、メール配信等によって既存顧客との関係を維持し、安定収益を確保します。SNS運用によって顧客とのエンゲージメントを強化するのも良いでしょう。
一方で「問題児」は、テコ入れが必要なポジションであることから、デジタル広告等によって短期的なコンバージョン(CV)をねらいます。新規リードを引き込むためにランディングページ(LP)やフォームの改修などをして、花形へのポジション昇格を目指します。
最後に、「負け犬」のポジションでは、デジタルマーケティングを最低限に抑えて、他の製品サービスにリソースを振り向けた方が良いでしょう。現存する顧客の維持に努めながらも、必要に応じて市場から撤退することも検討します。
このように、自社の製品サービスそれぞれが市場においてどのポジションにあるかを見極めながら、デジタルマーケティングのリソース配分を考えることが企業経営には重要となってきます。
まとめ
プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)は、自社の製品サービスがいくつも存在する場合に、中小企業が限られたリソースを振り分けるときの判断材料となるフレームワークです。それぞれの製品サービスの特性を理解しておけば、単純に経営資源だけでなく、デジタルマーケティングを実行する際にも役立つでしょう。
1つでも当てはまったらチェックしましょう。
- 製品サービスが普及していく際に発生する、「キャズム」を理解することができた
- 顧客のカテゴリーを認識し、デジタルマーケティングで「キャズム」に対処できた